違う過去 2
長いHRも終えて帰りの支度をしていると、芹沢が担任に呼ばれた。
すぐ終わるかと鞄を持って待っていたのだが、存外に待たされた。
ようやく指導室から戻ってきた芹沢の表情は冴えなかった。
「どうした?」
「別に」
「そうか。話したくなったらいつでも聞いてやる」
「……おう」
帰り道、芹沢はずっと無言だった。
ずっと俺に話そうか悩んでいるようにも見えたが、結局は着替えるとすぐに「実家に顔出してくる」と、バイクに乗って一人で出掛けて行った。
その晩、芹沢は帰って来なかった。
朝になってようやく戻ってきたが、顔にはアザがあった。
芹沢は何も言わなかったので、俺も何も聞かなかった。
その日の放課後も芹沢は担任に呼ばれたらしい。
先に帰るように、と小山内から伝言を貰った。
「最近、いっつも一緒に帰ってたのにね〜。ちょっと寂しいでしょ?」
小山内がニヤニヤしながらそんなことを言った。
「別に……。一緒に住んでるからな」
「へ? どういうこと?」
「どういうって……そのままの意味だが」
「えええっ、何それ、いつから?!」
「つい最近だ。かれこれ2週間くらいだろうか」
「どっ、どうして教えてくれないの〜っ?!」
俺の言葉は小山内にとっては爆弾発言だったらしく、バンバンと机を叩かれた。
「別にわざわざ言うようなことでもないだろう」
「何言ってるの、これは事件だよっ!」
「大げさな……」
目を輝かせている小山内に、俺は苦笑した。
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