同じ家 13
土曜日で学校が休みということもあり、俺は芹沢の引っ越し作業につき合うことにした。
服を選ぶのに躊躇っていると、芹沢が女物だらけの箪笥の中からピンク色のTシャツと、フードつきの白いベストを選んだ。
出がけに「お掃除するんでしょ」と姉貴が俺の前髪をピンで留めた。
家電も家具も持っていない芹沢の荷物は、洗濯物を入れていた籠2つで収まる程度で、後は洗面道具と制服、雑多な小物などの入った大きめの鞄と寝袋だけだ。
掃除の方も床をざっと掃いて、窓と水回り、電球を磨くだけで終わり。簡単なものだ。
残った住人に挨拶を済ませ、大家に鍵を返却し、芹沢のバイト先へと向かうと、芹沢から連絡を貰っていた店長がちょうど駐車場にやってくるところだった。
「あまりに急な話で驚いたんだけど。太田君、本当にいいのかい」
「うちの両親の歓迎っぷりを見たら、きっと引きますよ。なぁ、カイ君」
「カイ君はヤメロ」
「そ、そうなんだ。それはそうと太田君……ふふ、髪の毛のピン、かわいいね」
店長が俺の髪を触ろうとしたのを、芹沢がペシッと叩いた。ぷくく、と笑う店長を芹沢が睨んだが、さすがに慣れているようで店長は気にもしなかった。
荷物は車で自宅まで運んでもらい、店長はケーキを手に挨拶を願った。
「あらぁ、わざわざご丁寧にどうもぉ」
父は仕事に出ていたが、母はさっそく紅茶を入れて歓迎してくれた。
「本当にこの度は甥が差し出がましいお願いを申したようで……。皆慈、ご迷惑をおかけしてませんか?」
「いえいえそんな! カイ君が遊びに来るようになってから、家族みんな大喜びなんですの。タカちゃんは本当に仲良くしてもらってるし、私も主人も、もう一人息子が出来たみたいで」
「へぇ……」
店長も嬉しげに俺を見たが、その時の俺はというと、見せびらかすように壁にかけてあるセーラー服が気になって仕方なかった。……しまっとけ!!
「年頃の娘さんもいらっしゃるのですよね。本当に構いませんか?」
「娘はもう社会人ですし、結婚前提でおつき合いしている男性もいるようですので」
「……え? じゃあ、あちらは?」
とセーラー服を指さす店長。
「あれはタカちゃんが……」
「わあああああッ!?」
そりゃ思わず叫びたくもなる。
芹沢も眉間にしわを寄せて神妙な顔をしていた。
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