同じ家 8
「ああ、家族と折り合いが悪いとか何とか、前に言ってたかな……」
俺がそう言うと、店長は驚いたような顔をした。
「へぇ、そんなことまで話してるんだ。アイツ、人に弱みを見せるのが嫌いなんだけどな。自分の兄をこう言うのも何だけど、結構酷い親でねぇ……」
「そういうのは本人が話したくなった時に聞こうと思うので」
「……ははっ、クールだねぇ。わかった。皆慈のこと、よろしく頼むよ」
店の奥から私服で出てきた芹沢は、俺が店長と話しているのを見て、眉を顰めた。
「テンチョー、私語は慎めよ」
「皆慈の貴重なオトモダチだからちゃんと挨拶しておかないとなーって」
「うっさいわ、ボケ」
芹沢が俺の腕を掴んで店を出ようとするのを引き止めて、俺はダブルソーダのバーアイスをひとつ買った。
「腹一杯じゃなかったのか?」
「いいんだよ」
コンビニから出ると俺はすぐに袋から出し、真ん中から二つに分けて片方を芹沢に差し出した。
「俺の好きな漫画にこんなシーンがあってな」
「ふーん」
「師匠との絆だぞ」
「お前は勉強の師匠だもんな」
「キミは腕立て伏せの師匠だな」
「ギャハハ、何だそれ。ショボッ!」
二人でアイスを舐めながら道を歩いた。
――ふと芹沢が立ち止まる。後ろを振り返ったかと思えば、バッとまた正面を向いた。ダラダラと冷や汗を流している。
「……どうした?」
「い、いる。お前の姉貴……つけて来てる」
「……」
すごいな、芹沢。とうとう悪寒センサーを体得したか。
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