同じ家 6
その晩は、児島さんのおごりで美味しい中華をご馳走になった。
弟ができたみたいだ、と児島さんは俺を可愛がってくれて、「ご両親に」とその店の名物の肉まんの折り詰めも持たせてくれた。
姉が化粧室に立った時、児島さんが小声で話しかけてきた。
「尊志君、その……彼氏と行くとこまで行ってるの?」
「は?」
「僕の恋人は彼女だけど、その、なるべく痛くない方法とか、気持ちよくなれる方法とかなら、少しはアドバイスできると思うから……」
児島さんはもじもじしながらそう言った。
親切で言ってくれているのはわかるのだが……やっぱアンタもちょっと変だ!
「児島さん。姉貴に何を言われたかわからないが、俺に恋人はいない」
「えっ、クラスメイトの男の子と仲良く一緒に登下校したり、毎日のように二人っきりでずっと部屋にこもってるって……」
……。こうやって聞くと、俺はすごくイタイ人なのか?
「普通に友達です」
「ええっ!? う、うわぁ、僕すごく恥ずかしい……」
戻ってきた姉貴に、「酒も飲んでないのに、何で赤くなってるの?」と尋ねられた児島さんは、より一層真っ赤になった。
あー、このいじられやすさ。確かに姉貴が好きなタイプではある。
駅前通りから一本外れた道を、そういやこの辺は芹沢のアパートの近くだなぁ、などと思っていると、通りがかったコンビニに当の芹沢の姿があった。
どうやら姉貴も同時に気が付いたらしく、嬉々として「せっりざーわ君!」と駆け寄った。
外にあるゴミ箱のビニール袋を交換していた芹沢はギョッとして、その弾みにいくつか缶がこぼれ落ちる。
それを拾い集める俺に気がついた芹沢は、ホッとしたように礼を言った。
バイト先では大学生ということにしているらしいが、確かにコンビニの制服を着た芹沢は高校生には見えなかった。
[*prev][next#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!