同じ家 2
朝っぱらから両親のテンションは高かった。
母は寝起きの芹沢にメロメロだったし、父は芹沢がプロレスのチケットのお礼にと買っていたパンフレットに大喜びだった。
大歓迎モードの両親に芹沢はとまどいつつ、勧められた食卓の椅子に座る。
父はスポーツ全般が好きで、親子で野球をするのが夢だったらしい。
ところが、俺の壊滅的な運動神経ではキャッチボールもままならず、むしろ母に女物の服ばかり着せられ、年の離れた姉とおままごとをして遊ぶような完全なるインドア派の子供になってしまった。
それでも俺に構いたがった子供好きの父は、俺にゲーム機を買い与えて一緒に遊んだり、特撮やロボットアニメを一緒に見るようになったのだ。母と姉のオモチャから救い出してくれたことに関してはかなり感謝している。
しかし、ここに来て父は、無惨に砕かれたかつての夢を芹沢に託そうとしているようだ。
「芹沢君、芹沢君っ、野球の経験はあるのかなっ?」
「いや、ほとんどないッスけど」
「キャッチボールはどうだい?」
「まあ、それくらいなら……」
目がキラキラ輝く父に気後れした芹沢が俺の袖を引っ張って、不可解そうな顔で「何、どういうコト?」と尋ねてきたので、「夢を見るのは自由なので、そっとしてやってくれたまえ」と言った。
母の用意してくれた朝食を食べていると、出掛ける準備を終えた姉が現れた。
「お姉ちゃん。まだ眠そうな顔してるわよぉ?」
母からの言葉に、姉貴はにんまりと笑った。
「ちょっと大切なイベントがあって、うっかり朝まで寝るのを忘れてしまったわ」
「ふーん?? 寝不足はお肌の大敵なのよぉ?」
「んふっ、大丈夫。心は潤ってるの」
姉貴は意味ありげに俺と芹沢の方を見た。
……。
近いうちに盗聴電波発見用の機器でも手に入れておくべきであろうか。
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