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違う印象 15
 芹沢の家がここから徒歩で行ける距離だというので、シャワーを借りることにした。

「コインシャワー、5分100円だけどな」

「まさか使う日が来ようとは……」


 西山たちと別れ、15分ほど歩いてたどり着いた芹沢のアパートは、想像以上にボロかった。壁のペンキはほとんどはげて、玄関の扉のガラスはガムテープで貼り合わせてある。

「声、筒抜けだから静かにな」

 芹沢はそう言うと、立てつけの悪い扉を持ち上げるようにして、ガタガタと横にスライドさせた。驚いたことに芹沢の他にもちゃんと住人はいるようで、玄関にいくつか靴が並んでいた。

 靴を脱ぐと、芹沢は上を指さす。どうやら部屋は二階らしい。

 ギイッときしむ階段を上がると、芹沢はすぐ横の部屋の鍵を開けた。電気の紐を引っ張ると、前に芹沢が言ってた通り本当に狭い三畳間の全貌が見えた。

 入り口の横に半畳分の小さな台所があり、奥に小さな窓がある。

 鴨居に渡された物干し竿には服が干され、その下の二つの籠には洗濯物が無造作に放り込まれていた。そして残りのスペースには、まさかの寝袋が。

 他の荷物はぺったんこの学生鞄と、台所に並ぶ身だしなみセットくらいだ。

「ほとんど生活感ないな」

「着替えて寝るだけだからな」

「この部屋に彼女を呼ぶのか?」

「さすがに寝袋OKの女はいねーだろな。声も筒抜けだし」

 そう言いながら芹沢は籠の一つからタオルを引っ張り出して俺に渡し、シャンプーやボディソープなどが入った洗面器を手にした。

 1階の廊下の奥には丸椅子が置いてあった。その横の扉を開くと中はタイル張りになっており、真ん中が板で仕切られ、右側に脱衣籠、左側にプールにあるような小さなバネ扉つきのシャワーがあった。

 芹沢は俺に三百円をくれた。

「これで15分な。金が足りなくなったら言えよ。俺も次浴びるし、廊下にいるから。汚れた服はこっちのビニール入れとけ」

 そう言うと芹沢は廊下の丸椅子に座った。

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あきゅろす。
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