違う印象 10
赤い髪の男は芹沢と同じくらいイケメンの不良で、背はヤツより高かった。
俺は視線に怯えながらも、携帯を開く。
「人を、さが、探してて……」
声がうわずってしまい、自然とやたら甲高い声になる。
携帯の待ち受け画面を見せると、赤い髪の男の後ろにいた男がすかさず「久野の野郎ッスね」と耳打ちした。
キューちゃんの本名は久野と言うらしい。恐らく西山と久野がくっついて、芹沢の中で「西野」になってるのだと理解した。どうでもいいことではあるが。
そして、この中では赤い髪の男(面倒なので以降は赤男と呼ぶ)が一番偉いようだ。
「お前、久野の女か」
「オ?! ちが……友達……(の友達)」
俺は声を出しても男に見えないのであろうか。姉貴の服の女子力にちょっと引く。
「ま、気が向いたら久野は助けてやるから、ちょっとどいてな」
「え?? あれ?」
どういうことだ? こいつらは《シエル》とかいうヤツラの仲間ではないのか?
俺がちょっと混乱していると、赤男は目を細めた。
「……ふうん? ここに立ってたのはただの偶然じゃないってことか?」
「え? いや、いやいやいや……」
腕をがっしり掴まれて、逃げ場なし。人、これをピンチと言うであろう。
焦る俺の背後で「パリン!」と何かが割れる音が聞こえた。それを皮切りに店の中から次々に乱闘の音が漏れ聞こえる。
「……ま、いい。入るぞ」
俺は赤男に手を引かれたまま、バーの扉をくぐることとなってしまったのである。
赤男が二つ目の扉を細く開けると、想像以上の大喧騒だった。
テーブルや椅子がひっくり返り、酒瓶やグラスの破片が飛び散り、怒声が飛んでいる。騒ぎの中心に白い頭が見えた。
二人ほど立て続けにぶっ飛ばしたところで、芹沢は背後から木製のバットで殴られた。
俺はショックで息を飲んだが、芹沢はギロリと背後を睨んで、殴った男を蹴り上げた。
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