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「お前、こんな漫画読んでるのか。意外だなー」

 芹沢が手にした漫画は、アニメにもなった格闘漫画だ。

「何だね、キミ。オタクはすべからく萌えキャラにうつつを抜かしていると思ったら大間違いである。認識を改めたまえ」

「改めたまえ、ってギャハハ、おめー言葉遣い変だろ」

「何を言っているかね。紳士の嗜みだろう」

「たしなみ!? 嗜みなのかソレ。ギャハハハ」

「気にするな。しかし、前方不注意でぶつかって悪かったと思っている。本も受け止めてくれて感謝している」

「おう!」

 芹沢は本を返してくれるのかと思いきや、俺の腕の中から本をさらに数冊抜き取って表紙を見ている。

「これ全部買うのか。キモオータは金持ちだな」

「決して金持ちではない。小遣いのほとんどを漫画に注ぎ込んでいるだけだ」

「さすがキモオータ。持ちきれねーみたいだから、レジまで持ってってやるよ。他にも買うのあるのか」

「いや。今日のところはこれだけだ」


 果たして何を考えているのか、芹沢は鼻歌まじりに本を持ってレジの方に向かう。

 その鼻歌をよく聞けば、芹沢が手にしている漫画のアニソンだった。

 俺は慌てて芹沢の後を追った。


 俺が会計を済ませるまで芹沢はレジ横で待っていた。

 これはまさか……ぶつかった詫びやら、荷物持ちをさせた礼という名の恐喝が待ち受けているのだろうか。

 今月末にも買う予定の漫画が3冊あるから、むむ、困るな……。

 戦々恐々とそんなことを考えていたが、芹沢が切り出したのは意外な言葉だった。

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