同じ夢 4
結局その日も俺の家でプリントを数枚終わらせ、なし崩し的に夕飯も食べて行くことになった芹沢だった。
心配の種である姉貴は、昨日残業しなかったのが響いたらしく、まだ帰ってきておらずにホッとした。
「キミ、明日は何時頃来れるかね」
今日は金曜日。明日と明後日でプリントを片づけなければならない。
「あー、さすがに今晩は爆睡しそうだわ。明日は夕方から別口のバイト入ってるけど、昼ちょい前くらいでいいか?」
「わかった」
俺達の会話を聞いていた母は、ウキウキと明日の昼飯の献立を考え始めたようだった。
翌日、俺の家にやってきた芹沢は、俺の姿を見るなりゲンナリした顔をした。
「何なのそのカッコ」
「中学時代の指定ジャージだが、何か?」
「信じられんわ、もー」
俺の通っていた中学校では、小豆色のジャージが指定されていた。
ジャージ生地なのに頭からすっぽり被るスウェットタイプで、脚もすぼまっている。
「そのデザイン酷すぎ。今時ありえん」
「ちなみに、この灰色の二本線から、通称『蕎麦ジャー』だ」
「ギャハハハ! 卒業してまで着るなよ、蕎麦ジャー!」
「俺の学年からこれに切り替わったものの、あまりに不評で翌学年もまた違うジャージになったのだ。つまり、この蕎麦ジャーは一学年だけのスーパーレアな品と言える」
「商品価値ねーよ」
「着られるものを捨てるのはもったいないからな」
「あー、俺にはその思考回路が理解できねー」
そういう芹沢は普通にTシャツにジーンズを履いているだけなのに、よく決まっていた。
俺にはよくわからないが、それらも良い品なのかもしれない。
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