同じ夢 3
俺は弁当箱を取り出した。
「でっけぇ!」
「俺一人では食べきれないので、責任もって手伝ってくれたまえ」
そう言うと、芹沢は笑いながら頷いた。しかし……
俺は弁当の中身を見た瞬間、目にも止まらぬ早業で蓋を閉めた。
芹沢も硬直しているところを見ると、俺の見間違いではなかったようだ。
それはもう芸術的な弁当だった。
お花畑のように型抜きされた野菜とハート型に並べられた唐揚げの中央に、俺と芹沢をモチーフにしたらしいおにぎりが並び、スライスハムと薄焼き玉子を切り抜いて作られた「LOVE」の文字。
俺は弁当箱の天地をひっくり返し、「ハッ!」と開けた。
さすがに花畑とハート型に並んだ唐揚げはどうにもならんが、似顔絵おにぎりとLOVEの文字が見えないだけでもかなり違う。
「……すまん。おかしな家族で」
「いや、まぁ……仲が良くていいんじゃね?」
「このままどこまでエスカレートするのか恐怖すら感じる。特にうちの姉貴は何をしでかすかわからんので、姉貴から貰ったものは絶対口に入れないように」
「大げさな」
「俺は昔、ジュースに酒混ぜられてフラフラになったところを『前立腺ってどこにあるの?』って襲われかけたからな。バイアグラの人体実験もされそうになったし」
「……法に触れてね?」
「仲は悪くないだけに、訴えることもできずに困っている」
芹沢は何も言わずに俺の差し出した箸を受け取った。
「今日もプリントだけなら、キミの家で手伝っても良いのだが」
「ワリィ、俺んち机がない」
「えっ。キミは一体どんな生活してるのだ」
「一人暮らししてんだけど、三畳間、風呂なし、トイレ・コインシャワー共同。安いぞー、家賃1万だ」
「現代日本にそんな物件が……。しかし、机くらい用意したまえ」
「どうせ勉強しねーしな」
「……」
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