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違う呼び名 1
 翌日。

 学校での俺と芹沢の関係は、昨日までと変わらないように思えた。

 言葉を交わすことなどなく、目も合わすこともない。芹沢は相変わらず寝てばかりだったし、俺から近寄る必要性も感じなかった。


 ……いや、よく考えてみたら。

 芹沢は今日も我が家に寄ると言っていたが、学校からふたりで仲良く向かうのだろうか。

 うわ、想像しただけでちょっと寒いではないか。

 下手したら、俺が芹沢にリンチでもされると心配した一般市民が警察に通報する危険性すら感じられる絵ヅラだ。

 昼休みに弁当をつつきながらそんなことを考えていると。


「……おい。こら。……た、タカちゃん」


 俺の椅子の脚がコツコツと蹴られた。

 タカちゃん?

 バッと振り向くと、購買から戻ってきたらしく、パンとコーヒー牛乳を持った芹沢がどこか居心地悪そうに立っていた。

 クラスメイト達が何かを囁き合っている気がするが、それはあえて無視する。

「いきなり俺をタカちゃん呼ばわりとは……」

「キモオータって呼ぶなっつったのお前だろうが」

「名字で呼ぶなど他にも手はあると思うのだが」

「……お前の名字って何だっけ」

 昨日、俺のうちに上がっておいてそれか。どうやら母や姉が俺を呼ぶ名だけが頭に残っていたらしい。

「太田だ。太田尊志」

「ギャハハ、太田だからキモオータだったのか。知らんかった」

「…………」

「タカシってどんな漢字だよ」

「尊敬のソンに、ココロザシだ」

「ソンケイって、どんな漢字だよ」


 芹沢はやはり馬鹿だ。

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