同じ道、同じ言葉 29
「俺も楽しかった。飛鳥君とこうやって普通に喋って、一緒にバイトして、遊べる日が来るなんて夢みたいだった。これからは自分の夢のために頑張ってくれ」
そう言うと、飛鳥の顔がぐっと歪んだ。
「……ごめんな」
声がかすれていた。
「ごめん。ゲームのこともそうだけどよ……ずっと、酷いことをしてた」
「もう忘れたな」
「いいや。俺はずっと覚えている」
飛鳥の言葉に、心のどこかが暖かくなった。
「……多分、他に俺を虐めてたヤツラは俺を覚えてもいないであろう。そういや何かキモイやつがいたな、くらいで、罪悪感すらきっと抱かない」
「でも、きっと……その引き金を引いたのは俺だ」
「流された人間の罪まで飛鳥君が背負うことはない」
泣きそうな顔の飛鳥の頭をそっと撫でた。
「俺も、ずっと心の中にトゲがささっているのだ。子供の頃、飛鳥君がはじめて家に招待してくれた」
「子供の頃の話はすんなよ」
「……俺はすごく嬉しかったのに、人付き合いが下手で、終いには飛鳥君を泣かせてしまった。きっと、本当の引き金は俺なのだ。だから、飛鳥君はもう泣かないでくれ」
「お前は優しすぎるよ」
飛鳥は空を仰いで、目に薄く張った膜を手で拭った。そして、ふわ、と俺の首もとのマフラーに触れた。
「……巻いてくれてありがとな。芹沢と……小山内にも礼を言っておいてくれ」
「ああ」
「また店に飯食いに来いよ。デザートくらい奢る」
「ふっ、ありがとう」
礼を言うと、飛鳥は俺を引き寄せて、俺の頭に顔を埋めた。
飛鳥の心臓の音が聞こえる。いや、俺の心臓だろうか……。
「……飛鳥、君?」
離れ際、飛鳥は俺の前髪をかき分けて、小さなキスを落とした。
「何だ。イタリア式挨拶か?」
俺の言葉に飛鳥がぷはっ、と笑った。
「そうそう、イタリア式。…………じゃあな」
名残惜しそうに目を細めた飛鳥だったが、もう二度と振り返らなかった。
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