同じ道、同じ言葉 28
翌早朝、宅配の仕分けのバイトに向かうと、飛鳥が俺の姿を見て目を見開いた。
「太田、それ……」
俺の襟元には、チェックとワインレッドのマフラーが二枚重ねで巻かれている。
「どちらも薄手だから、こういう使い方もお洒落だって、皆慈がな」
「芹沢が……」
飛鳥が皆慈の方に視線をやると、口を尖らせた皆慈が飛鳥の頭をボコッと殴った。
「変な気を回してんじゃねーよ! こっちだって遠慮しちまうだろーが」
「……、そうだよな、すまん」
そう力無く笑った飛鳥は、鞄の中からビニール袋を取りだして、俺に渡した。
中に入っていたのは、古いゲームだった。……見覚えがある。
「ずっと借りてたゲーム。もう覚えてねーかもしんねーけど……ようやく見つけたから返す。ほんと、今まで悪かったな」
「……まだ持っていてくれたのだな」
飛鳥に借りパクされていたゲームは、新品のように綺麗だった。
「我が家にまだ古いゲーム機が残っている。今度、古いゲームをみんなで遊ぶのも楽しいかもしれないな」
そう言うと、飛鳥も「そうだな」と頷いた。だが――
その日を最後に、飛鳥は宅配のバイトを辞めた。
話を聞かされた俺は、仕事を終えると慌てて飛鳥を追いかけて声を掛けた。
「飛鳥君。バイト、辞めるって本当か」
「――ああ。言ってなかったか。最近はバイトの頭数も足りてるし、そろそろ問題なさそうだったからな」
振り返った飛鳥はどこか気まずそうで。飛鳥は皆慈の代理としてバイトを始めたのだから、皆慈が戻った時に辞めても良かったのだ。
「そんな顔すんな。もう一個のバイトの方、平日の夜も入れないかって誘われたから、そっちに集中しようと思って」
「イタリアンレストランか?」
「ああ。閉店後の仕込みも手伝わせてもらえることになったんだ」
「……そうか……」
それは、飛鳥の見つけた夢に続く道だ。
「本当はもっと前に誘われてたんだけどな……。ここも楽しくて、つい先延ばしにしちまってた」
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