同じ趣味 14
芹沢を本屋の近くまで送ろうと玄関先で靴を履いていると、姉貴が仕事から帰ってきたようだった。
「はぁ〜、くたくた……」
そう呟きながら扉を開けた姉貴は、芹沢を見た途端に硬直した。
「どもッス……」
芹沢がペコッと頭を下げると、姉貴はハッと覚醒し俺の肩をガシッと掴んだ。
「……タカちゃん?! 何、この美形! ちょっ、どこで拾ったの?!」
「クラスメイトだ」
「えっ、クラスメイト?! 馬鹿っ、何でこんな美味しいネタを今までお姉様に教えないの?! 美形×平凡! 不良×オタク! グッジョブよ!」
「……は??」
「聞かなくていい。行こう」
目が点になっている芹沢の背を押し、逃げるように玄関を閉めた。
「すまない、最も見られてはいけない人間に見られたようだ」
「何、どゆこと?」
「彼女はあのホモいエロ本の所持者だ。今頃彼女の脳内ではキミ、完全に俺とイチャラブの間柄だ」
芹沢がブーと吹いた。
「な……何が楽しいんだ、それ」
「男がレズもので興奮するのに近いのではないかと思われる」
「あー」
芹沢は解ったのか解らないのか微妙な表情になった。
「基本的に彼女はいつもこの時間帯に帰宅する。もう少し早く帰れば会わないで済むはずだ」
「わかった。どっちにしろ、毎日飯を食わせてもらうわけにもいかねーからな。明日も続き読みに寄らせてもらうけど、明るいうちに帰るわ」
「わかった」
本屋の看板が見えたあたりで芹沢は「じゃーな!」と片手を上げ、明かりの方へと駆けていった。
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