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同じ道、同じ言葉 18
「《シエル》と《カブキ》は対立していると聞いたが、学祭などに来て大丈夫なのか」

 俺がそう尋ねると、早川は肩をすくめた。

「あんま大丈夫じゃねーから、なるべく地味な私服で来てるだろうが。ダチに招待されたんだよ」

 地味……。イケメンは地味な服を着てもイケメンなのだな……。

「トラブル起こさないでくれよ」

「わかってるって……。ダチにも迷惑かけたくねーからな」

 そう言って早川はキャップを深くかぶり直した。


「あ、そうだ。芹沢、ちょっと来い」

「なンだよ……」

 早川は皆慈の首に腕を回して、少し離れたところで小声で何かを話し始めた。

 しばらくすると、皆慈がいきなり手にしていた小道具の銀色のお盆で早川の頭を思いっきり殴った。

 バイ〜ィ〜ン、という少々間抜けな音が周囲に響き渡る。

「……てめぇ」

 それまでわりと温厚そうな表情を浮かべていた早川のまとう空気が一気に冷えた。

「やかましい、この変態野郎!」

「アァ?!」

「おいおいおい!」

 いきなり喧嘩に発展しかけたのを、4人でしがみついてかろうじて止めた。

 俺はまだ早川を睨みつけている皆慈のおでこをペチッと叩いた。

「いきなり他校の生徒に手を上げるとは、信じられないぞ」

「だ、だって、アイツが……」

 そこまで言って、皆慈は口ごもった。俺は頬を膨らましてその顔を覗き込む。

「言い訳なら聞いてやるが?」

「…………その、お前のケツの具合はどうかって言うから」

 俺は無言で皆慈からお盆を受け取った。


 バイ〜ィ〜ン!!


 再度そんな音が響き渡り、早川が頭を抱えてうずくまったのは必然である。

「……お前、実は残念なイケメンだったんだな」

 西山が早川に対し、気の毒そうに呟いた。

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あきゅろす。
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