同じ趣味 13
「……すまない。どうやら母は、キミのことを某少女漫画の登場人物と同一視化しているようだ。確かにちょっと雰囲気が似ているからな」
「さすがお前の母親だな……」
食事を終えて帰ろうとする芹沢に、その漫画をちょっとだけ見せてやることにした。
不良少年が転校先で図書委員の少女と出会い、徐々に心を通わせるというプラトニックな話だ。
その不良キャラは白銀の髪に涼やかな目元が麗しい美形だ。
「母にはキミがこう見えている」
と、その漫画の名シーン、不良がヒロインに不器用な告白をするシーンを開いて見せると、芹沢は顔を手で覆って「わーっ!」と叫んだ。
『俺みたいなのが図書室に来て、お前は迷惑じゃないのか』
『迷惑だなんて!(ぶんぶん)』
『そんなこと言うと……毎日でも来ちまうぞ』
『はい! お待ちしております(にこ)』
きっとさっきの俺たちの会話がこのシーンに似ていたため、母の脳内で乙女ドリームスイッチが入ったのだ。
「うーわー……何だこの居心地の悪さ」
芹沢は耳たぶまで赤く染めていた。
「キミはまだいい。俺はこのヒロインと重ねられていたと思われる」
ヒロインはショートボブの黒髪に黒縁眼鏡をかけたパッとしない少女だ。
「眼鏡も髪型も似てるしなー。お前がセーラー服を着たら意外と……」
「妙な冗談はやめたまえ。母に聞かれたら実行に移しかねん。それでなくとも、幼い頃から女物ばかり着せられていたからな……」
「マジか……」
「ああ。未だに姉貴のお下がりばかりだ」
「ア? 今でもか?! それはちょっと問題ねぇか?!」
「服にはこだわりがないのでな。しかし、さすがにスカートは捕まりそうだ」
「……もう少しこだわれよ」
芹沢が呆れたようにため息をついた。
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