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「……すまない。どうやら母は、キミのことを某少女漫画の登場人物と同一視化しているようだ。確かにちょっと雰囲気が似ているからな」

「さすがお前の母親だな……」

 食事を終えて帰ろうとする芹沢に、その漫画をちょっとだけ見せてやることにした。

 不良少年が転校先で図書委員の少女と出会い、徐々に心を通わせるというプラトニックな話だ。

 その不良キャラは白銀の髪に涼やかな目元が麗しい美形だ。

「母にはキミがこう見えている」

 と、その漫画の名シーン、不良がヒロインに不器用な告白をするシーンを開いて見せると、芹沢は顔を手で覆って「わーっ!」と叫んだ。


『俺みたいなのが図書室に来て、お前は迷惑じゃないのか』

『迷惑だなんて!(ぶんぶん)』

『そんなこと言うと……毎日でも来ちまうぞ』

『はい! お待ちしております(にこ)』


 きっとさっきの俺たちの会話がこのシーンに似ていたため、母の脳内で乙女ドリームスイッチが入ったのだ。

「うーわー……何だこの居心地の悪さ」

 芹沢は耳たぶまで赤く染めていた。

「キミはまだいい。俺はこのヒロインと重ねられていたと思われる」

 ヒロインはショートボブの黒髪に黒縁眼鏡をかけたパッとしない少女だ。

「眼鏡も髪型も似てるしなー。お前がセーラー服を着たら意外と……」

「妙な冗談はやめたまえ。母に聞かれたら実行に移しかねん。それでなくとも、幼い頃から女物ばかり着せられていたからな……」

「マジか……」

「ああ。未だに姉貴のお下がりばかりだ」

「ア? 今でもか?! それはちょっと問題ねぇか?!」

「服にはこだわりがないのでな。しかし、さすがにスカートは捕まりそうだ」

「……もう少しこだわれよ」

 芹沢が呆れたようにため息をついた。

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あきゅろす。
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