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同じ道、同じ言葉 5
 高校に入って二度目の夏休み。

 ハチコー剣道部は「練習したい人だけ練習」という緩い部である。

 しかし、6人しかいない部員のうちの半分が風紀委員、というくそ真面目な集団ゆえに、ほぼ毎日活動しているのであった。

 運動神経がほぼ皆無の俺は基礎練くらいしかついていけず、半分はマネージャー的な仕事をしている。しかし、以前に比べると格段に体力がついたと思う。

 ちなみに、皆慈も剣道部に入部した。誘ったときは渋っていたが、一人で家にいるのが嫌だったようだ。

 俺と一緒に雑用をしようとしていたが、「才能の無駄遣いをするな」と練習に参加させた。

 当然、待ちかまえていた唐草先生にビシバシ鍛えられて、日々「いつかブッ殺す……」と呻いている。


 閉校日には泊まりがけで海に行った。瀬名の親戚が海の近くで旅館を営んでいて、格安で泊まれるからと誘ってきたのだ。

 飛鳥が西山と久野も誘って、総勢7人でゾロゾロと出かけた。

 海に行くことすら久しぶりの上、もちろんこんな人数で遊ぶのは初めてで、ほんの少し居心地の悪さを感じながらも胸が高鳴った。

「飛鳥君、そういや前に一緒に遊んでいた友達は誘わなくて良かったのか?」

「……あー、あいつらな。今は……うん、疎遠になってるな」

 ふと気になって訊ねたのだが、飛鳥は言葉を濁した。

 後で西山と久野から、飛鳥はあのグループから抜けた、という話を聞かされた。

 そのせいで孤立したり、昔の仲間たちから嫌がらせを受ける事も増えて、西山たちがちょこちょこ声をかけるようになったのだと言う。

「まー、飛鳥なりに色々と責任感じてんじゃねーの?」

「林との件で《シエル》から睨まれてたから。仲間に迷惑かけたくなくて抜けたんじゃないかなー」

「そうか……」

 何だかすごく胸が痛くなって、少しでも飛鳥の力になりたくなった。

 だから、「もし俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ。最善は尽くす」と迫ったのだが、「何もねーよ!」の一点張りで逃げられた。

 小山内がニヤニヤしながら「太田君も残酷なことを言うねぇ」と言っていたので、俺はもしかすると無意識にまた飛鳥に酷いことをしたのかもしれない。

 人間関係は本当に難しい……。

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あきゅろす。
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