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違うアイツ 19
 その日は唐草たち先公の泊まる部屋にやっかいになった。

 清の部屋について行こうとしたけれど、騒ぎになるからと止められた。

「お前の修学旅行は来年だ。ちゃんと席は残ってるからな」

「……え? え?!」

「残念ながらお前はまだ一年だが」

「ええぇ……」

 行方知れずの間、唐草の計らいで休学扱いになっていたコトと、当然のごとく留年していた現実を知らされた俺。

 喜び半分、悲しみ半分だ。

「清とクラス変わっちまうなぁ……」

 ぼそりとそう呟くと、唐草が片眉を上げた。

「ずっと気になっていたんだが、“清”ってのは太田のことか?」

「……“太田”ってのは清のコトか?」

「お前を手懐けてる男が“清”ならそうだな。太田尊志だ」

「たか……し……」

 う、うわああああっ、そうだ! 清じゃねぇ!

 俺は恥ずかしさのあまりに、畳の上を転がってもだえ苦しんだ。

「お前が照れるポイントはよくわからんな……」

 浴衣に着替えた唐草は、呆れたような顔で俺を見ていた。



 翌日、唐草たちは一足先に地元へと戻っていった。

 俺はというとバイクを東へと走らせていた。

 後ろに清――いや、太田尊志を乗せて。

 バイクは宅配で送れと言われたが、5万円近くかかるという話を聞いて、自分で走らせて帰るとごねた。

 小山田が「僕の目が届かない場所でラブラブデートなんて! 僕もついて行くよ!」とワケわからんコトを叫んでいたが、清――いや、太田尊志に「魂だけなら連れて行ってやる。今すぐ死ね」と言われて絶句していた。

「き……タカ。寒くねぇ?」

「……ふははっ、“清”はやめたのか」

 振り向いて尋ねた俺を、アイツは笑ってからかった。

「昨日、唐草に言われるまで気が付かなくてメチャ恥ずかしかったっつの」

 俺がふてくされるように言うと、アイツは「清でも俺は構わんよ」と答えた。

「周りの目なんぞ気にするな。キミの頭はあまり多くのことを覚えていられないのだから、難しく考える必要はない」

「あのなぁ……」

「ところでな。俺もキミの名前をどう呼ぼうか考えあぐねているのだが、どうするべきかな。放っておくと、うちの両親と同じくカイ君が定着するぞ」

「カイ君はヤメテ。皆慈でいいよ、皆慈で」

 俺がそう言うと、アイツはヘルメット越しににっこり笑った。


「皆慈、帰るぞ。みんな待ってる」


 俺の居場所へと、背中を押された――。



次章:同じ道、同じ言葉

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あきゅろす。
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