違うアイツ 16
「お、お前……いつからいたんだよ」
おそるおそるカメラの持ち主に尋ねてみる。
「酷いなぁ。ずっといたよ! 最初からいたよ! 超気配消してたけど」
そいつはカメラの撮影画面から一時も目を離さずにそう言った。
「本当は危険だから待っていろと言ったのだが、小山内君もキミのために何かしたいと言ってくれてな。だから、もし何かあった時のために録画を頼んでいたのである」
「そ、そうか……」
俺のため、だったのか。
だけど……俺、清にしがみついてガッツリ泣いちまったんだけど……。
しかも、色々と恥ずかしいコトを口走ってたような……。
…………。
「だから参考資料だと言っておろうが!」
そいつからカメラを奪い取ろうとした俺を、清がド突いた。
当たり前だけど俺はそのまま解放される訳もなく、警察で事情聴取を受けた。
あの事務所からは麻薬の類も出てきたそうで、事務所の人間だけではなく、俺の母親も色々な罪状を問われたらしい。
俺が未成年であるコト。クスリをやってる形跡もないコト。母親も逮捕されたコト。
それから、最後に電話をしたあの婆さんが俺に言われた通り警察に届け出を出したそうで、俺は親に無理強いされて事件に巻き込まれたと判断された。
実の父親のところにも連絡が行ったらしいけれど、俺の名を出した途端に一方的に切られたそうだ。まぁ、そうだろうな……。
結局、何やら警察の人間が絶大な信頼を寄せる唐草に俺は身元を預けられた。
警察から出る前に、母親に会った。
刑事に挟まれた彼女は、疲れ切った顔で力無く笑った。
「アンタでも……笑ったり出来るんだね。子供の頃からいつも無表情だから、感情なんかないんだと思ってた」
俺は母親の顔が能面みたいだと思ってたけれど、母親にとっての俺もそうだったんだ。
「……アンタのせいで私は幸せになれないと思ってたけど……アンタから幸せを奪ってたのは私なんだね。ごめんね……」
そう言って涙を溢れさせた母親は、刑事に促されて連れて行かれた。
その背中を見送る俺を、清がそっと撫でてくれた。
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