違うアイツ 12
「あー、おじゃまします」
……この声。
「何だ。ここはガキの来る場所じゃねーぞ。さっさと帰ぇんな!」
扉を一枚隔てた向こうで、所員の一人が応対に出たのがわかった。
「失礼。こちらで迷い犬を預かっていると聞いたのだが」
「はぁ?」
「いるだろう。白い毛並みの大型犬」
「白……あっ、ぐわっ?!」
応対していた所員の呻く声に、俺を押さえつけている男達の顔にも動揺が走った。
すぐに俺たちのいる会議室の扉が開かれた。
そこには学生服を着込んだ男が立っていた。
黒縁眼鏡の奥の目が、床に転がっている俺の姿を捕らえる。
「よう。ずいぶん探したぞ」
…………マジで。
「……清?」
「ふはっ、そうだ。キミの“清”は帰りを待ちきれずに迎えに来てやったぞ」
俺は夢でも見ているのか?
「テメェ、何の用だクソガキ」
所員の一人が、手にしていたナイフをチラつかせながらアイツに近づいていく。
「……やめろっ、そいつに手を出すんじゃねー!」
扉の近くまで行った所員の動きが止まった。
男が後ずさるのと同時に、半開きになっていた扉の影から木刀がニューッと伸びてきた。
「随分と物騒なものをお持ちで。この落とし物をお返ししようと思っていたが、どうやらそれはやめた方が良いようだな……」
アイツの後ろに、やたら迫力のあるジジイが木刀を手に立っていた。
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