違うアイツ 6
それからしばらくして、俺はアイツの家で暮らすコトになった。
住む場所を失いかけた俺を見かねたアイツは、俺のために両親に頭を下げてくれたんだ。
母親の無理難題にも応えてセーラー服なんかも着せられていた。
そこまで俺のためにしてくれたのが、胸が痛くなるほど嬉しかった。
どうしても眼鏡外したアイツも見分けられるようになりたくて、アイツが寝てるうちに顔をペタペタ触って、ほくろの数を必死に数えたりもした。
何度も数えてるうちにアイツが目を覚まして、「何してる」と聞かれたから、「ほくろ数えてた」と素直に言ったら叩かれた。
アイツの家族は、俺を見るとみんな笑顔になる。
俺は人にそんな顔を向けられたコトがほとんど無かったから、正直むず痒かった。
アイツの姉貴は変な話ばかりするからすごく苦手だったけれど、嫌いではなかったし、顔立ちは整っているからきっと美人だろう。
アイツの母親は温かい飯を山のように作ってくれる。アイツの父親は俺と遊びたがるし、風呂にまで入ってきて背中を流したりした。
そんな状況に困惑していると、アイツは偉そうに笑いながら俺の頭を撫でた。
どうしてそんなに撫でるのか聞くと、実は俺の方がアイツの頭を無意識に撫でまくっていたらしい。全然気がつかなかった。
「動物はして欲しいことを相手にするものだ。馬とかな」
とアイツは言った。
「俺は馬か!」
と言うと、アイツは首を捻りながら「どちらかというと、犬か猫」と答えた。
猫はお前だ。
くすぐるとニャアニャア鳴く。
そう言ってからかうと、「鳴いてなどいない!」と怒った。
――猫。
一瞬何かを思い出した。
……そうだ……。
何だったか、あの小説……。
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