同じ過ち 17
俺はホッとした。望みが繋がった、と思った。
芹沢の叔父さんに電話で連絡をとると、すぐに学校まで駆けつけてくれた。
相談の結果、芹沢が残した金で1学期の未納分の経費を支払い、代理人として休学の手続きをしてくれた。
全ての手続きを終えると、芹沢の叔父さんが車で家まで送ってくれることになった。
「……あの、ちょっと寄って欲しいところがあるのですが、時間は大丈夫ですか」
「今日はもう仕事はないから平気だよ。どこ?」
「ええと、これという住所はわからないのですが……」
何度か道を間違えながらも、その場所にようやくたどり着いた。
芹沢と一緒に夜景を見た坂道。
まだ夜景には早く、町は夕陽に染まっていた。
「おお、綺麗な場所だねー」
そんな声を背中に受けながら、俺は車から降りてガードレールの側まで行った。
ふと、足下にいくつか煙草の吸い殻が落ちているのを見つけた。
「それ、皆慈が吸ってた銘柄だね」
「ポイ捨て厳禁だと今度会ったら叱ってやる。というか、禁煙だな」
「ははは、太田君、アイツの母親よりずっとお母さんみたい」
「……アイツにもそんなことを言われた気がするな」
「前に『太田君ってどんな子?』って聞いたら、『坊ちゃんに出てくる清』って言ってたよ。皆慈が夏目漱石読んでるなんてびっくりしたよ」
「ああ、学校の課題で渋々。俺が朗読してやったんですよ」
その絵ヅラを想像したのか、芹沢の叔父さんは爆笑しながら、背広の内ポケットから一枚の紙を取り出した。
「課題ってコレだろ?」
それは、あの日芹沢が取り組んでいた現国のプリントだった。
「制服とか鞄とか教科書とか……。アイツ、学校関係の荷物をうちの玄関先に置いてったんだ。きっと、未練があって捨てるに捨てられなかったんだろうな……」
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