同じ過ち 14
俺が意識を取り戻したのは、それから一週間後だった。
車に撥ね飛ばされた俺は頭から落下し、脳内の血腫を取り除く大手術が行われたそうだ。
それ以外にも、左腕を骨折、肋骨にもヒビが入っていたらしい。
芹沢は事故の二日後に荷物をまとめて家から出ていった、と姉貴は言った。
世話になった旨の手紙と、金の入った封筒が仏間に置いてあったそうだ。
「パパもママも必死に慰めてたけどね。もう、芹沢君の方が死んだみたいだったわ。タカちゃんがいない家にいても、苦しいだけだったんでしょ……」
「ならば、今は叔父さんのところか?」
「違うみたい。コンビニのバイトを辞める、今月分の給料はタカちゃんに渡して、って電話で言ったらしいわ。もう携帯の契約も切られてて連絡が取れないって」
「え……」
「宅配もイタリアンレストランも電話で連絡が行ったみたいよ」
「……アイツ! 学校も辞めるつもりだ!」
「どういうこと?」
「学費稼いでたのに、俺に貢いでどうする……」
俺は、白い布団をギュウと握りしめた。
うつむいた俺の頭を、姉貴がそっと撫でた。
「……タカちゃんの意識が戻ったって、教えてあげたいわね……」
あの事件の翌日、林は少年Aとして警察に捕まったらしい。
拉致監禁に傷害事件、そして殺人未遂。全く、人生の無駄遣いだ……。
飛鳥は事故のあった日に号泣しながら俺の両親の前で土下座をしたそうだ。
「タカちゃんが飛鳥君のこと、友達だって言うからねぇ……」
目の前で俺が攫われるのを目撃していた母は、散々泣きはらした目をしながらも笑って許したらしい。
「怪我が治ったら、今度はちゃんと仲良くしてあげてね?」
そう言うと、飛鳥はこくりと頷いたそうだ。
我が母ながら、器がでかい。
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