同じ過ち 9
縄が緩んだ久野は、林が仲間に号令をかけて視線がそちらに集中した隙に胸ポケットから携帯を取り出して、再び手を後ろのロープの輪の中に戻した。
「警察を呼んだ方が良いのではないか」
俺がそう囁くと、西山と久野が顔を見合わせた。
「芹沢までとっつかまるかもしれねーぞ?」
「事情は俺らが説明すればいい」
「……早川に呼んでもらおう。とにかく電池がほとんどないはずなんだ」
と、久野は西山を盾にしながら手探りで電話帳を開いた。確かに電池残量が少ないようで、電池マークが赤く表示されていた。
俺はその操作を目で追い、早川のページになったところで合図を送ると、久野は通話ボタンを押した。
数コールで電話は繋がった。俺は携帯に顔を近づける。
「久野西山負傷、人質1。敵は林ほか約30名。目的は芹沢潰し。警察呼んでくれ」
必要最小限のことを伝え、小声でさっき飛鳥が言った住所を繰り返した。
『……待ってろ』
久野の声ではないから信じてもらえるか心配だったが、おそらく林の張り上げてる声も聞こえたのだろう。
通話が切れると同時に画面が点滅した。
「電池切れた」
「あっぶね。マナーモードにしてて良かった」
久野はホッと安心したようにため息をつき、ズボンのポケットに携帯をしまった。
「あとは早川次第か……」
「てめぇら、さっきから何をくっちゃべってんだ」
飛鳥がガムテープを手に近寄ってきて、西山と久野の口に貼り付けた。
できれば、警察の方が芹沢より先に来てくれたらいいと願っていた。
しかし、その願いは天に届かなかったようだ。
「芹沢来たッス! あと数分で到着予定!」
伝令が飛んだ。
林が手で合図すると、飛鳥が俺を小脇に抱えて手で口を塞いだ。
倉庫の中の車とバイクがライトを消して気配を絶った。
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