嫉妬未満 7 ユミはその名刺を食い入るように見た。 「お前と同じ学校の制服だろ。この近所に住んでるらしくて、今日寄ったスーパーでよく会うんだ」 可愛らしい柄の名刺には名前とメアドと顔写真。 青葉さんは賢そうな美人だが、その写真は何故かちょっとキョトンとした表情をしていた。 「……この人、見た事ある。確か生徒会の会計の人。すごく頭いいんだって」 「生徒会役員かー。特待生らしいネ。花椿は特待で入るの難しいんだろ?」 「うん」 「ちょっと話しただけでも頑張り屋サンって感じだったネ。彼女も母子家庭らしいから、案外ユミと気が合うかもしれないぞ」 そう言うと、ユミはプゥッと頬を膨らませてそっぽを向いた。 「生徒会の人と比べられても困るもん」 俺は可愛らしく拗ねる娘の姿に苦笑した。 「比べてなんか……。いや、違うな。知らず知らずにそういう所はあったかもネ。彼女の姿を見てたら、『ユミは元気かな』って思ったな」 「……」 「彼女、俺の事を『いいお父さん』とも言ってたヨ。こんなダメなオッサンなのにな」 俺がそう苦笑すると、ユミはぶんぶんと頭を振って叫んだ。 「お父さんはダメじゃない!」 ユミが大声を出すのは珍しいので、俺は驚いて目を丸くした。 「……お父さんはダメじゃないもん……」 俺の視線に気がついたユミは、顔を赤くしながらコップの水を口にした。 「そうだね。もしかしたら私……青葉さんと気が合うのかもね」 続く ↓励みになります! [*前へ][戻る] |