嫉妬未満 6 俺の部屋にはろくな食器が揃っていないため、俺はどんぶり、ユミが茶碗でカレーを食べた。 大きいスプーンもひとつしか無かったので、ユミは呆れた顔をしながらティースプーンでカレーを食べる羽目となった。 「もー、せっかくカレー作ったのに台無しだよ、お父さん」 「すまん」 「今度までにお皿とスプーン、3つずつ買ってね」 「3つはいらんデショ」 ユミは、俺と加奈子を何とか復縁させられないかと考えている節がある。 寂しい思いをさせたのだろうな、と心の中で頭を下げた。 「……お父さん」 「ん?」 「もしかして、新しい彼女でもできたの?」 「ぐっ、ガフッ?!」 俺は思いっきりむせた。 「もー、汚いよ、お父さん……」 「す、すまん。ユミがいきなり変な事言うから」 「変じゃないもん。冷蔵庫の横に置いてあった紙袋、女の子の服のメーカーだよ。その中にタッパーがふたつ入ってた」 ユミは口をとがらせながら言った。 女が男の浮気をかぎつける嗅覚はハンパないと言うが……。 例え高校生でも女は女。俺は冷や汗をぬぐった。 「それは知り合いからちょっとお総菜を分けてもらったの。酷い食生活してるのがバレてな」 「お父さんに、私は料理上手の女です、ってアピールしてるんじゃないの?」 ユミはまだ疑いの目を向けていた。 「それはないだろ。その子、お前と同じくらいの歳の子だぞ」 俺は、あの娘からもらった名刺の存在を思い出して、鞄の中の名刺入れを探った。 「あった。ほら、この子だよ」 [*前へ][戻る][次へ#] |