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嫉妬未満 4
 外はとうとう雨が降り出していた。

 私はハァ、とため息をつくと、鞄から折りたたみ傘を取り出して、いつものスーパーのタイムセールに間に合うよう急いだ。


 私は、木曜日にあのスーパーに行くのがちょっとした楽しみになっていた。

 安曇野さんは木曜日に休みが取れる事が多いようで、眠そうな目をこすりながらビールとお総菜を手にしている姿を時々目撃した。

 彼に会えると、私はすごく嬉しくなった。

 例えるなら、コアラのマーチでまゆげコアラを見つけた時のような気持ちだ。


 今日も会えないかな。

 そしたら、この陰鬱な気持ちも少しは晴れるのに。


 私は雨の交差点で信号待ちをしながら、三車線の道路を挟んで向かい側にあるスーパーを見やる。


 私の気持ちが天に通じたのだろうか。


 なんと、ちょうど入り口からレジ袋をぶら下げた彼が出てくる所が見えた。

 安曇野さんは雨に気がつくと、困惑したように空を見上げている。


 信号が変わり、私は安曇野さんに駆け寄ろうとした。


 ――だけどそれは叶わなかった。


 彼の後ろから現れた少女が、何か言いながらピンク色の傘をポンと広げた。

 安曇野さんは照れくさそうにそのピンク色の傘を受け取る。

 そして、少女は嬉しそうに安曇野さんの腕にすがりついた。


 私はとっさに傘で自分の顔を隠した。

 けれど、きっとそうしなくても彼らは私に気がつく事などなかっただろう。



 気がつけば信号はまた赤になっている。


 私はぼんやりと二人の後ろ姿を見送った。



 少女は花椿女学院の制服を着ていた。彼女が安曇野さんの娘さんなのだろう。

 ショートでふわふわの髪。裏表がなさそうで表情豊かな笑顔。


 自分が安曇野さんに父の面影を重ねているのは自覚していた。

 でも、彼が私を娘のように思うわけがなかった。


 彼女と私はあまりにも違いすぎた。



 その晩、私はナオミに手紙を書いた。

 何度書き直しても偽物の感情で塗り重ねたような内容にしかならなかった。

 買ってきたばかりの便せんが何枚も何枚もゴミになっていく。


 とうとう、最後の一枚になった。

 ……私は震える手で、こぼれ落ちた気持ちを綴った。



 ナオミ、私、


 寂しいよ。

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あきゅろす。
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