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憧れ以上 4
 ハートとお花が飛び交う可愛い名刺には、名前と携帯番号とメルアド、そして顔写真が印刷されている。


「これ、お礼にあげます」


 安曇野さんは、口元をほころばせながら名刺を受け取った。

「青葉、サキさんか。さすが女子高生。ファンシーな名刺だネ」

「いいなぁ、安曇野。サキちゃん、俺にもこの名刺ちょうだいよ〜」

「あ……ごめんなさい、一枚しかありませんでした」


 本当はまだ何枚か残っていたけれど、安曇野さんにしかあげたくはなかった。


「これから仕事の話をされますよね。長々とお邪魔してごめんなさい」

 私はアイスコーヒーの最後の一口を飲むと、席を立とうと伝票を手にする。

「サキちゃん、それ、俺が払っとくよ」

 宇鷺さんがニマニマしながら伝票を奪おうとしたけれど、安曇野さんが宇鷺さんのおでこをベシッと叩いて阻止してくれた。


「青葉さんはお店のケバい姉ちゃんとは違うの。五十過ぎてみっともないったら。大体お前、それを経費で落とす気だろ?!」

「いやぁ、その……へへ」

「笑って誤魔化すな!」


 宇鷺さんは編集長らしいけれど、こんな砕けた会話が出来るって事は安曇野さんも同世代なのだろう。

 私の同じ年頃の娘さんがいるという話だから、てっきり母と同じ四十歳くらいかと思っていたけれど、どうやら五十歳を過ぎているらしい。

 やっぱり男の人の年齢って解らない。


「青葉さん、またネ。気をつけて帰るんだヨ」

「はい。ごきげんよう」


 花椿女学院では、挨拶は全部「ごきげんよう」と言う。

 娘さんからその習慣を聞いていただろう安曇野さんは、笑いながら「ごきげんよう!」と返してくれた。

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あきゅろす。
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