憧れ以上 3 「もしかして、おじさんも記者さんなんですか?」 「……ん、まぁネ」 「一昨日からそうじゃないかと思ってたんです」 私がそう微笑んで言うと、おじさんはキョトンとした顔をした。 「おじさん、一昨日は徹夜明けって感じだったでしょ。普通のサラリーマンが帰るにはおかしな時間だったし、何週間も帰らない事もあるって言ってたし」 「あ、ああ……」 「背広はヨレヨレだったから、接客業じゃない。猫背だから、消防士や自衛官でもないと思ったし」 おじさんは慌てたように背筋を伸ばした。 「そんなに忙しくて誇りを持てるお仕事って何だろう、って考えたら、報道や出版関係のお仕事かなって」 「……驚いた。ほんとに鋭いネ、お嬢さんは」 おじさんは本当に感心した顔をしていた。宇鷺さんはポカーンとしている。 「このお嬢さんはネ、俺が女っ気ない事も一目で見抜いてるから」 そう言うと、おじさんも名刺を取り出して私に差し出した。 ――週刊民潮編集部記者 安曇野千嗣 名刺にはそう書かれていた。 「あずみの……せんじ、さん」 「お嬢さんとの再会を祝して、それあげる。困った事があれば、いつでも連絡ちょうだいネ」 おじさん……安曇野さんは、そう言って笑った。 私は何だかすごく嬉しくなって、鞄の中からパソコンで作った名刺を取り出した。 [*前へ][戻る][次へ#] |