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babysitter
2日目


昨日はあれからどっと疲れが出たのか、私はいつの間にか寝てしまったみたいで気付いた時にはとっくに朝になっていた。
隣ではマーモン隊長がすやすやと寝ている。
良かった、つぶさなくて!
それにしてもマーモン隊長のベッドはメチャメチャ寝心地がいいなぁ。
さすが幹部のベッド。

とりあえず改めてマーモン隊長を観察してみる。
下膨れのほっぺはぷにぷにで、むにゃむにゃ言ってる口元もかわいらしい。
見てるだけなら何の害もないけど、私は子育てなんかした事ないから面倒を見るとなったら話は別…きちんと生かしてあげられる自信なんかないよー。
弱ったな〜と思ってたら、悩みの種が目を覚ましてしまった!

「…ママン?」

だから、違うんだって!

「わ、私、ママンじゃないです…」

「…ママンが…ママンが…ひどいよ…!」

口がへの字になったかと思ったら、むぎゃーとハンパない声で泣き出した。
うわーっ、しまった!

「ご、ごめん、冗談冗談!ママンでちゅよー!」

慌てて抱っこして揺らしてみたり、適当に子守歌を唄ってみたりしたけど全然泣き止んでくれない。
どーしよう!?
まずい事になった。
しかもなんで私は赤ちゃん言葉なんだ?

泣き声を聞きつけたルッスーリア隊長が、ミルクを準備してきてくれた!

「あらあら、随分泣いちゃって!こうしてるとマーモンちゃんもかわいらしいわね〜!うふふ」

渡された哺乳瓶をくわえさせようとしたけど、マーモン隊長はぱんとそれを払いのけてわんわん泣き続けている。
くそー、何が気に入らないんだよ。

「…あらん、おなかすいたわけじゃないのかしら?もしかするとオムツ替えて欲しいとか…?」

やべっ。
昨日の夜からそのままだ!
絶対何かしら出してるよね?
洗ったりたたんだりする事ならプロ級だけど、替えた事のない私はルッスーリア隊長の指導のもと何とかオムツを交換した。
こんなの付けてる人にいつも私叱られてたんだなぁ…すごい微妙な気分。
新しいオムツに替えてあげたけど、マーモン隊長はまだ泣き止まない。
ミルクでもなくてオムツでもないならいったいどうしたらいいの…?
フードの奥からポロポロと大きな涙の粒が次々と落ちていて、なんだかかわいそうな気もするけど…
あー、もう私が泣きたい!

「うるせえぞぉ!」

怒鳴りながらスクアーロ隊長までやって来た。
うるさいと言った割にはかわいいぬいぐるみを抱いている。
剣帝ともあろう人がクマのぬいぐるみをマーモン隊長の目の前であれこれ動かしてみてくれたけど、泣き声はおさまらずむしろヒドくなる一方だ。

「…よく泣くなぁ…」

「何が気に入らないのかしらん」

困ったもんね〜と言いながら、二人は出て行ってしまった。
えっ、ちょっと待って!
一人にされても…!

「…いつまで泣かせてやがる?」

「ひぃっ!?」

いつの間にか背後にXANXUS様がいた。
私は恐怖のあまり泣き続けるマーモン隊長の口を無理矢理ふさぎそうになる。
ヤバい、危うく小さな命を消してしまうところだった。
こんなのが初めての殺しになるなんて絶対勘弁だ!

「…腹すいてんだろ」

「えっ…いや、さっきミルクはあげようとしたんですけど…」

「てめえのをか?」

「は?」

意味がよく分からなかったけど、XANXUS様は私の上着のボタンをぷちぷちと手際良くはずし始めた。

「…えっ?な、何してんですか?」

「てめえのを飲ませろっつってんだ」

「ちょ、わ、私、出ませんからっ!」

「あ?出ねーか試したのか?オレが調べてやる」

出るかーっ!
ボタンをはずす手を必死で払いのけた。

「…ちっ、出し渋りやがって!」

渋ってねーっ!!
XANXUS様って、実はバカなんだろうか?
泣き続けるマーモン隊長を盾にしながら身を守る。

XANXUS様は眉間にシワを寄せて私とマーモン隊長とを交互に睨みつけていたけど、ベッドサイドに腰掛けるとポケットから取り出した何かをそばにあった空のグラスに移した。
チャリンチャリンとガラスと金属が当たる音が響く…それは、少し古びた感じのコインの様だった。

驚いた事にXANXUS様が空のグラスにコインを数枚落とした途端、嘘みたいにマーモン隊長が泣き止んだ!
ひっくひっくと言いながらも、視線をXANXUS様の手元のグラスに移している。

「…マーモン、見ろ」

XANXUS様はマーモン隊長の目の前でそのグラスを振ってみせ、コインの音を響かせた。
みるみるうちに隊長の口元に笑顔が戻る。
えっ、なんでなんで!?
音が出るオモチャが欲しかったの?

「…パパンすごいや。ローマ時代のコインだね!マニア垂涎の稀少なコレクションだよ!」

「…はっ?」


今日新たに学んだこと。
どうやら、この赤ん坊は金目のものを与えると泣き止んでくれる様です。


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