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babysitter
初日A


オムツ係最後の日にマーモン隊長の部屋を訪れた私は、なぜか隊長にママンと呼ばれ、そばを離れようとするとわんわん泣かれるハメになってしまった。
恐ろしいXANXUS様をパパンと呼んで泣きやんだものの、その後集まった幹部の皆さんが色々調べた結果、ふわふわ浮いたりしているから特殊な能力はそのままみたいだけど、どうやら中身が普通の赤ちゃんになっているらしい。

「すりこみなのかしら?アナタの事をママンだと信じて疑わないみたいだわ〜」

ルッスーリア隊長がミルクを準備してやって来た。
飲ませようとするとマーモン隊長は警戒するように私にしがみついて首を振る。

「やだ。ママンがくれるものじゃなきゃやだ」

「…気味が悪いぜぇ…」

スクアーロ隊長が青ざめた顔で心底不気味そうに呟く。
いや、気持ちは分かりますよ、私も同感です。
なんたってマーモン隊長は、デレの部分を全く感じさせないシビアな赤ん坊だったんだから。
ルッスーリア隊長に手渡された哺乳瓶を、恐る恐るマーモン隊長の小さな口元に運ぶと素直にそれをくわえてくれた。
一生懸命ごきゅごきゅ飲んでる姿はちょっとカワイすぎる。

「…まじで赤ちゃんになってんじゃん…おもろいけどこれからどーすんの、ボス?」

ミルクを飲むマーモン隊長を興味深そうに眺めながら、ベルフェゴール隊長がXANXUS様に尋ねた。
怖くて直視出来なかったけど、XANXUS様は私とマーモン隊長をさっきから睨みつけるようにして見ている。
幹部の皆さんはもちろん、XANXUS様と普段顔を合わせる機会なんかない私は正直ちびりそうなくらいビビっていた。

「何が原因だろうな?」

「…そうよね〜、朝はいつもと変わりなかったものね〜」

レヴィ隊長とルッスーリア隊長が首をひねる。
確かに今朝汚れたオムツを回収に行った時は普段と変わらず辛口コメントをぶつけられたっけ。
柔軟剤を間違ったのがバレて、ごわごわするって怒られた。

「…でも、コイツから離したら泣き喚くんだろぉ?元に戻るまで世話させるしかねぇんじゃねーかぁ?」

「えっ!?そ、そんな…!?」

「元に戻るといいんだけど…とりあえずあたし達じゃダメみたいだものね」

「マーモンがびーびー泣いてんのなんか超レアじゃん!王子動画撮っとこー!ししっ」

ベルフェゴール隊長は歯を剥き出しにして笑うとハンディカムを取りに出て行く。
残った皆さんは眉を寄せて困り果てた感じでXANXUS様の言葉を待っている様だった。
ってか、待って!
私子育てとかした事ないし、無理ですって!
下手したらマーモン隊長の命が危ないですって!

「…仕方ねえ…マーモンが元に戻るまで、てめえが世話しろ」

「む、無理で…」

「殺したらかっ消す!」

「ひいぃっ!」

額に銃を突きつけられて私は哺乳瓶を取り落としてしまった。
こ、こ、殺される…!

「…ママンをいじめないで、パパン」

「…ぶっ!くくっ、パパンだとよぉ…ゔあ゙っ!?」

こらえきれず噴き出したスクアーロ隊長が、XANXUS様に思いっ切り殴られて吹っ飛んだ。
ひえぇーっ!
バ、バイオレンス過ぎる、噂以上に!
本気で私の命もヤバいかもしれない…!!

「…とにかく、ちゃんと世話をしろ。いいな?」

断れるものなら断りたいよ!
ギロリと紅い目で睨まれた私は、泣きたい気持ちで頷くしかなかった。
断ったら間違いなくかっ消されるもん…

「…ママン?」

おなかいっぱいになったらしいマーモン隊長が、フードの陰からこちらを見上げながら不思議そうに呟いた。

あーもうっ!
私はママンじゃありません!


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あきゅろす。
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