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babysitter
9日目


「あら、マーモンちゃんの調子が悪いの?」

昨日のピクニックでうっかり陽が暮れるまで昼寝していたのが悪かったのか、今朝私が起きた時からマーモン隊長はグズって起きてくれなかった。
確かに何だかぐったりした感じだから妙だなとは思ったんだけど、ぷにぷにのほっぺがかなり熱くてビックリ。ま、まずい、これは俗に言う発熱では…!?
XANXUS様の姿は既に見えなかったけど、私は飛び起きてルッスーリア隊長のところへ向かった。

「うーん、困ったわね〜。普段マーモンちゃんは自分でちゃっちゃとお薬を調合しちゃう子だったから…大人用のお薬じゃマズいでしょうし」

「ど、どうしましょう!?私死なせてしまうかも…」

軽く泣きそうな声ですがりついたらとりあえず氷枕を準備してくれた。
お薬はボンゴレファミリーかかりつけのお医者さんに確認してくれるらしい。

「目覚めた時にママンがいないときっと不安だと思うわ。早く戻っておあげなさい」

確かに病気で弱ってる時って心細くなるもんな…自分が風邪引いた時の事を思い出してちょっと母さんが恋しくなった。
少し前までの小憎らしいマーモン隊長を思い浮かべると複雑だったけど、今は私を母親だと信じて疑わないワケだし仕方ないか。急いで部屋に戻れば案の定私を呼びながらしゃっくりをあげている。

「ママン…ひっく…どこに行ってたの?」

「ごめんね、冷たいの持ってきたから!」

「お熱できついよ…ぐすぐす」

小さな隊長の身体には大人用の氷枕が敷き布団みたいだ。ひんやりして気持ちが良かったのかすぐに愚図るのが治まる。
あー、間違いなくこの数日、私の背筋の方が冷えっぱなしなんだけど…どっと疲れが出て隣に横になったら、いつの間にか一緒に寝てしまった。



「おい、オカマからだ」

「お、お帰りなさいまし!」

夕方になってXANXUS様が少しくたびれた感じで帰ってきた。
仕事に出てたみたいで羽織った隊服や高そうなシャツには何か赤いものがベタベタ付いていて…も、もしかしなくてもあれは血っぽい…ヴァリアーの一員とはいえ殺しのスキルを何一つ持ち合わせてない私は初めて見る返り血にかなりテンパってしまったけど、飛び起きて血糊の付いた紙袋をドキドキしながら受け取ったらそれはお薬だった。
夜になったからか隊長の熱はまた少し上がり始めていて、おまけに私まで何だか熱っぽくなってきたのでどうしたらいいのかと少し朦朧としながら困っていたのでXANXUS様がたとえ血まみれだとしても今は神に見える。

「記憶がなくなった途端貧弱になりやがったな…」

隊服のジャケットを脱ぎ捨ててマーモン隊長に言うと、XANXUS様はその大きな掌を私の額に伸ばす。

「顔赤くしやがって、てめえもか」

弱っちいな、そう言ってそのまま額を張り手みたいに押してベッドに倒された。弱っていた私は何の抵抗も出来ないままにぼすんと沈む。
うわっこのままセクハラに流れこんだら今は抵抗出来ないよ!ひいぃっと顔をひきつらせていたら、XANXUS様は私には見向きもせず紙袋を奪うとごそごそして子供用のシロップ薬を取り出した。

「…どうすんだコレ?」

「た、隊長に飲ませて頂けますか…?」

ちっと面倒そうな舌打ちが返ってきた。ちょっ、聞いてきたのは自分なのにこの反応はおかしくないか!?
XANXUS様はシロップの小瓶をはぁはぁ言ってるマーモン隊長の口にずぼっと突っ込むと飲めと一言だけ言って一気に注ぎ込んだ。

「むぐっ!?」

だ、大丈夫かな、隊長…息が詰まりそうな声を出してじたばたしてるけど。ち、窒息死とか勘弁だ。
空になった小瓶をぽいと投げ捨てたXANXUS様は、今度はずいっと隣に横たわる私の方へ身を寄せる。
ひぃっと思った瞬間、目の前には造りものみたいな赤い瞳が迫っていて、こつんと額が押し当てられ…えっ…コレって…おでことおでこが接触してますよね…?

「…やっぱり熱があるな」

「ひぎゃああぁっ!」

近い近い近ーい!
この人はこんな見てくれしてんのにどうしてこんな原始的で鉄板ネタみたいな事をナチュラルにやるかなー!?
ぷしゅ〜っと湯気を噴き出してオーバーヒートしそうな機械の気持ちが分かった気がする。

真っ赤になってベッドに潜り込んだのに、布団をめくられて私も子供用のシロップを思いっ切り口に突っ込まれてしまった。
XANXUS様、もうお気持ちだけで結構ですから!


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