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新KYO
プロローグ

――今日も、良いお天気。

眩しそうに太陽を仰いだゆやはそう呟き、手にしていた洗濯物を干し始めた。小さな身体でくるくると動き、次々に干していく姿はなんだか微笑ましい。あっと言う間に干し終えて、彼女は空を見上げた。

「ご主人様と皆は、今日も外の世界に行ったのね…」

少し寂しそうにそう呟くと、ゆやはパタパタと家の中に戻っていった。

彼女は狂という赤眼の鬼神の使役である。彼は気まぐれに使役を呼び出していたが、ゆやのように幼くて戦闘能力のない者は初めてのようだった。初めは何故そんな者を呼び出してしまったのか分らなかった狂だが、呼び出してしまったものは仕方ない。結局、身の回りの事をさせる為だったと無理に理由をつけ、そのまま家事などをやらせていた。

暫くして、変化が起きた。ゆやの物怖じしない真っ直ぐな物言いや、全ての者に対する慈しみの眼差しが、まず狂の他の使役の心を掴んだ。

幼い子供の姿のゆやに、四聖天と呼ばれ恐れられる彼らをどうこうする力などあるはずもない。歯向かえば立ちどころに消されてしまうことは、火を見るよりも明らかだ。それでも。

――光を孕む彼女の存在は、彼らにとって特別で、かけがえのないものになっていた――

そんな、鬼神と恐れられる彼らと、一人の小さな少女の、ちょっとした日常と、成長の物語。


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