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新戦国
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どんよりと曇った空は、月も星も見えない。こんな夜は、忍びにとってはとてもいい夜のはずだった。だが、こうも血を流してしまっては、嗅覚の優れた犬であれば簡単に悟られてしまうだろう。

「致命傷ではないんだけど…これじゃ駄目ね」

暗がりに転がり込んで、暫し人をやり過ごす。なるべく血が垂れないように注意していたので、気配さえ消してしまえば、人間に見つかることはないだろう。その間に、私は腕の傷を確認していた。幸い、浅い傷のようだが、その割には派手に血が流れていた。急いで持っていた血止めを傷に塗りこみ、着物の裾を引き裂いてそれで覆った。これで血が流れ出ることはもうない。一つ小さく息を吐いた、その瞬間。

「いたぞ、こっちだ!」

犬の鳴き声と共に、男の声が響いた。もう少し時を稼げるかと思っていたが、犬はかなり優秀な存在のようだ。私は懐に忍ばせた密書を確認すると、立ち上がって夜の闇へと躍り出た。約束の刻限にはもう間に合わないかもしれないが、それでもこれを届けなければいけない。それが私の使命であり、主に仕える意味でもある。

「待てっ!」

刀を振りかざした武士達が、わらわらとやってきた。待てと言われて待てるような状況なら、待ってやり過ごしたいのが本音であるが、相手は殺気立っているし、立ち止まれば斬り捨てられるだろう。

「待たないよ、明日のお正月は屋敷でゆっくりするんだから」

「な…うわぁ!」

私は煙幕を投げつけると、町外れへと駆け出した。


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