新戦国
2
では、何が目的なのか…そう訊ねようとした時、一人の男が駆け込んできた。
「名無しさん、助けて下さいっ!」
「どうかしたの?」
みれば、ご近所の新婚さんだ。血相変えて駆け込んできたからよほどの事があったのだろう。名無しは手にしていた洗濯物を縁側に上げる。
「また…あいつ等が暴れてるんですよ!」
「なんですって!?」
ここ最近、戦で荒くれ者が町に入り込み、好き勝手にやっていたのだ。なんとか町衆で対処していたらしいのだが、噂は名無しの耳にも届いていた。
「分かった、すぐ行くわ」
名無しは家に駆け込むと、父から譲り受けていた槍を手に家を飛び出す。
「名無しさん、俺も行きますぜ」
「あ、大丈夫です。左近さんは父の話でも聞いてて下さい!」
「話はその後でもいい。最近鈍ってるんで、悪党相手に俺も暴れたいんですよ」
左近はニヤリと笑うと、大きな得物を担いで名無しと並んで駆け出した。
「でも…」
本当は、名無しとしては部外者の手は借りたくなかった。町は町衆と自分の手で守りたかったのだ。
「大丈夫、名無しさんの気持ちは知ってますよ。要するに…俺が部外者でなければいいんでしょう?」
駆けながら、左近が横目でそう言う。名無しは訝しげに左近を見るが、左近は楽しげに目で笑うばかりで何も答えなかった。
騒ぎの場所はすぐに分かった。町の男が何人か荒くれ者に向っているが、歯が立ちそうもなく、何人かの者は血を流し倒れていた。
「なんてことっ!」
そう叫んで立ち止まった名無しを見て、左近は無意識に口角が上がっていくのを感じた。
――やはり血は争えないもんだ。
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