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新戦国
3

「さて。慶次様、一度撃ってみて下さい」

「今、ここでかい?」

「ここは鍛錬場ですよ」

そう言われ、慶次は火縄を受け取ると、的の前に立ち構えた。ほんの一時、間が合った後、轟音を響かせ的を射る。

「…お見事です」

ほぅ、と息と共にそう零した名無しに、慶次はしかし首を振った。

「いや…的に当たっただけじゃ、どうもな」

「最初は誰でもそうですよ」

たしかに的には当たったのだが、自分の見当違いの場所に当たってしまっているのだ。元々、火縄は狙いが定めにくいと聞いていたが、雑賀衆のように高い命中率を見ると簡単にできるように思えてしまう。そこが歯痒い。

「短期間の鍛錬で、それだけできれば上出来でしょう」

彼女はそういうと、慶次から火縄を受け取り、彼と同じ的を狙った。銃声と共に繰り出された弾は、真っ直ぐ、中央を貫く。

「…やっぱり違うねぇ」

慶次が感嘆の息を漏らすと、名無しは微笑み、彼を見上げた。

「慶次様。目当を定める時、どんな事を思っておいでですか?」

「目当を、かい?」

そう言われて慶次は顎に手を当て考えた。

「強いて言うなら…的に当てること、か」

その言葉を聞くと、彼女がほんの少し悪戯な色をした目で慶次を見る。

「一つだけ、慶次様にお教えしたいことがあります」

「なんだい?」

慶次の問いかけに、名無しはにっこり笑うと、火縄を再び慶次に握らせた。

「『寒夜聞霜』の心持でいなければならないんだそうですよ」



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あきゅろす。
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