戦国無双頂き物
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いつも、何も聞かずにただ俺を受け入れる彼女が、今夜は何故かとてももどかしかった。
明らかにいつもと違う俺を見ても、やっぱり「うん」と返すだけだった。その顔を見て落ち着いた反面、今日だけは理由を聞いて欲しいと思った。
…身体ではなく、心を、欲しいと思った。
…なんでだ?
今まで一度も感じたことのない、こんな想い。−いや、感じようとしなかっただけなのか。
切り離されていた何かが戻ってきたような…そんな安心感すら覚える。
「…孫市……起きてる…?」
背中越しに控えめな彼女の声が聞こえる。
ああ、と応えながら、彼女の方に寝返ると、ずいぶん顔と顔が近くなった。
「…お前が酒弱いの、知らなかったぜ」
「…言ったコト、ないもん…」
ビール1缶も空けられないほど酒が飲めない彼女はなんだか新鮮だった。
「…今日さ、慶次に会ったんだ…」
「…うん…」
「…彼女の月命日でさ、ちょうど墓参りに行くとこだったんだ…」
「…うん……きゃ…?!」
静かに聞いてくれる彼女を胸に抱き寄せ、埋めるように腕を回した。
「ま…孫市…?」
「…慶次な、彼女を愛してんだ…」
「?…進行系?」
「そう、愛し続けてんだ。…これから先も、ずっとな…」
少しの沈黙の後、そっか、と彼女は呟き、俺の背中に腕を回した。
…柔らかい匂いが、した。
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