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戦国無双頂き物
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「お前…猫の親分みたいだな」


数匹の猫に囲まれ何やらしゃがみ込む大きな金髪の背中に向かって、呆れた声を投げた。


「よう、孫市」

にかっと笑い、慶次はゆっくりと立ち上がった。足元では猫が名残惜しむように鳴いていた。

よく見ると、手には花束。それで慶次がこれからどこに行くつもりなのか気付く。

「…今日か…月命日」

慶次は毎月、必ず彼女の所に足を運ぶ。
こんなでかい図体のくせして、花束を大事そうに抱え、飽きもせずにこの一月のことを語ってくる。
…いつまでも、若く美しいままの、彼女に。

「…ああ。…孫市がまたフラれた話もしてくるぜ」
「うるせぇよ。お前こそ、寂しさのあまりとうとう猫に手ェ出し始めたって報告してくるんだな」



ははっ、と笑ってじゃあな、と残し、慶次の背中が小さくなっていった。


−慶次にとっての、たったひとつ。


失ってもなお、彼女は慶次にとって生涯で、ただ一人。


『−愛に形がなくて、よかった』


『−愛だけは、いつまでも失うことはないんだって、気付いたんだ』



悟りを開いたぜ、とでも言いたげな顔をするようになったのは、ようやく最近で。




「…愛、か…」


形の見えないその危うい存在を、慶次は恋人を失ったことで捕えることができた。


−それじゃあ、俺は?


慶次を見ていると、俺が幾多も囁いてきた『愛』って奴は、虚無のものだったと思い知らされる。



…ミャォ…



足元で、首を傾げて俺を見る猫。
不思議そうなその瞳を見て、ふいに彼女のことを思い出す。



…あいつ、何してるかな…





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