戦国無双頂き物 宵い時。4 −意味がよくわからなくて。 え、という顔をすると、いつもの人好きする顔ではなく、とても真面目な顔をして私の方を見た。 「…名無しは…物心ついてから、ずっとここで働いてきたんだろ…?…だったら…普通の娘のように、遊んだり、出掛けたり……恋をしたり…。…そういう当たり前のことが、できなかっただろ…?」 −言われてみれば、確かにそうだった。 街道から少し外れているとはいえ、次の町まで距離のあるこの辺りは、宿場として多くの人が利用する。 そんな土地柄、お客様の絶えない毎日で、下働きの私はほとんどこの旅籠から出ることがなかった。 −だからこそ、孫市様に言われるまで気付かなかった。 …そうか、と気付いてしまえば脆いもので。 …急に何かが抜け落ちてしまったような気がした。 . [*前へ][次へ#] |