戦国拍手ログ
2006年8月
あちこちで傷つき倒れた者が転がっていた。
「ほぉ、案外元気そうじゃないか」
そんな中で、ゆっくりと歩を進めてきた名無しさんに、片手を上げて声を掛ける。
「当たり前、あたしを誰だと思ってんの?」
肩に太刀を掲げながら、不敵に微笑む彼女の頭を掻き抱く。ふるり、と一つ震えた彼女の身体を抱き締めて、髪をくしゃりと撫でてやった。
まだ経験の浅い名無しさんには、無謀な作戦だったかもしれない。だが彼女は俺を信じて戦場を駆け抜けた。俺の立てた作戦なら絶対大丈夫だと、信頼しているからと、率先して先頭に立っていた。
――本当は、怖かったろうに…。
「すまなかったな…」
思わず漏らした謝罪の言葉に、彼女は弾かれたように顔を上げた。
「どうして謝るの?あたしは、なんにも心配してなかった。貴方に謝られることなんてないわ」
そういうと、俺をじっと見つめる。名無しさんの言葉と表情に驚いて、俺は言葉を失った。
なんて強い女だ。俺に全幅の信頼を寄せ、そして俺の思っていた以上のモノを与えてくれる。
「まったく…俺の姫君は、俺を黙らせるのが上手いらしい」
「どういう意味?」
「こういう意味だ」
――荒野のような戦場で、輝く光に口付けた。
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