戦国拍手ログ
2006正月
【政宗と貴女】
「寒い!」
ぶるっと身震いしてそう叫ぶ名無しさんに、政宗は呆れたように言った。
「だから言ったであろう」
二人並んで見ているのは、未だ明けぬ東の空。
「だって…」
みれば政宗は重装備、比べて彼女は軽装備である。
「お前が寝坊などするからだろう。今から着込んできたら間に合わぬがな」
意地悪そうに笑う政宗に、ぷっ、と頬を膨らます。
「…平気です!」
そんな意地を張る手も顔も、寒さに凍え赤くなっていた。政宗は苦笑すると、背後からふわっと彼女を包んでやる。
「もう少し可愛げがあればいいものを…名無しさんに風邪を引かれては、儂が困る」
「…!!ど、どうせ可愛くないですよ!…あ、ありがとう…」
「ふん、ちゃんと前を向いておれ」
寒さとは別の理由で赤くなった名無しさんの頬を、朝日がキラキラと照らした。
*******
【幸村と貴女】
そわそわとした様子の彼女に、幸村は駆け寄った。
「すまぬ、待たせたな」
「…!幸村様、いいえ」
待ってなどいないという名無しさんの指先はほんの少し赤くなっていた。
「すまない、話が長引いてしまって…」
申し訳なさそうに言う幸村に、彼女は笑った。
「いいんですよ、幸村様。待っている時間も楽しいですし、色んな方とご挨拶も出来ましたから。それに…」
「それに?」
「…幸村様、ちゃんと来て下さいましたから」
そういって、ふわりと微笑む彼女は、幸村の心を捕らえて離さない、花の様な姿だった。
「…!あ、あの幸村様…」
そっと、冷たくなった名無しさんの手を取る幸村。彼女の顔も、そして心なしか幸村の顔も赤くなる。
「今年も…共に良い一年を送ろうな」
「…はい!」
「では、遅くなったが行こうか」
そういって初詣に出かける二人の手は、柔
らかく繋がれたままだった。
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