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戦国拍手ログ
2008年ホワイトデー

年度末ということもあるが、ここのところとても忙しかった。今日も人がまばらなフロアでパソコンに向き合って、カタカタとキーボードを鳴らしていると、少し離れた席から声がした。

「ふぅ…これで山は越えた、か」

正面から視線を逸らせそちらを見れば、肩に手を当て、軽く首を回している直江兼続が視界に入る。ほんの少し疲れたような表情を浮かべる彼に、私は少し考えると、引き出しを開けて奥から小さな缶を取り出した。蓋を開け中身を確認すると、席を離れ彼の前に立つ。

「お疲れ様。どう?甘い物でも」

そう言いながら缶を差し出すと、兼続は訝しげに覗きこんだ後、小さく笑みを浮かべた。

「これはありがたいな。一つ戴こう」

そう言って中から手に取ったのは、ピンク色した苺味の飴玉だ。彼が密かにそれを気に入っている事は知っていたので、この前こっそり買っていたのだ。まぁ、こんな機会がくるとは思っていなかったが。

「もう一息なんでしょ?」

「あぁ…名無しさんが手伝ってくれたからだ」

ありがとう、そう言って笑った彼を見て、なんだかちょっと得した気分になる。

「さて、もうちょっと頑張りますか〜」

そう言って缶から兼続が選んだ物と同じ飴玉を取り出そうとすると、ちょっと待て、と止められた。

「その、私は気が利かないからどういう物を贈ればいいのか判らなかったんだが」

そう言いながら引き出しから彼が出してきたのは、カラフルな色の飴玉が詰まった、小さな瓶だ。可愛らしいリボンが掛けられたそれを、私は兼続に手渡された。

「…これ…」

「先月くれた、それの返礼だ。その…私は本当に嬉しかったからな」

正直びっくりして言葉を失ってしまった。まさか、まさか。

「でも…」

「名無しさんにとっては義理だったとしても、それは私の気持ちだ」

ほんのり頬を染めた兼続を見て、可愛いと思ってしまったのは気のせいではない。

「ありがとう」

そう言ってぎゅっと小瓶を握り締めると、中の飴玉がコロコロと揺れた。くすぐったいくらい甘い気持ちも、つられるようにフワフワと揺れた。


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あきゅろす。
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