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戦国拍手ログ
2008年バレンタイン

「こんにちは〜」

昼休みも終わる頃、元気な挨拶に部屋にいた全員が振り向いた。彼女はこの会社に出入りする業者の子で、一年ほど前からここに出入りしていた。

「ありゃ、名無しさんじゃん。いらっしゃ〜い」

くのいちが駆け寄ると、彼女はニコニコ笑いながら挨拶した。この笑顔と気さくな人柄が、この会社で男女に関わらず好かれている理由だ。特に男共の多くは、名無しさんに少なからず好意を寄せていた。

「いつも元気だね!いい子、いい子」

近くに寄ってきたねねに頭を撫でられ、照れたように彼女は笑う。ねねは目を細めると少し首を傾げ言った。

「でも、今日は何も注文してないはずだけど…」

「あ、今日はお仕事じゃないんです」

そう言うと名無しさんは小さな包みがたくさん入った紙袋を見せた。

「お世話になってる皆さんに、少しでもお礼を、と」

名無しさんは微笑みを浮かべ、今日はバレンタインですから、と告げると、くのいちとねねに包みを一つずつ手渡した。

「ありがとう、愛してるわん♪」

くのいちが抱き着くと、彼女は笑って答える。ねねも嬉しそうに礼を言った。

その後、部屋にいた他の男達にも一つずつ手渡していった。ある者は律義な彼女に丁寧な礼を述べ、ある者は憎まれ口を叩きつつ、僅かに頬を染め受け取る。またある者達は歯の浮くような言葉を並べ、ある者は破顔し陽気に笑った。どの者も一様に嬉しそうだった。

全て渡し終えたら、ちょうど昼休みも終わったため、名無しさんは帰っていった。そんな彼女を見送った後、くのいちがおもむろに口を開く。

「そういえばさぁ、あの子、本命にはこっそり手作りなんだって〜」

それを聞いた包みをもらった男達が、色めき立ったのは言うまでもない。

さて、彼女の心を受け取った幸運な男は誰だったのか…それは名無しさんと、小さな包みと、それを受け取った幸運な相手だけが知っていること。


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あきゅろす。
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