戦国拍手ログ
2006年大晦日
大晦日といえば、やらなければならないことはたくさんある。私はあまり料理が得意じゃないから、お掃除に回されていた。
「…政宗様」
他にいた子達がいっせいに私の顔を見て『ひっ!』って言ったのにはちょっと引っ掛かったけど、そんなことはこの際どうでもいい。多分、額には青筋が何本も浮かんでいただろうし、人相もかなり悪かっただろうから仕方ないだろう。
「…なんだ?」
だが、主である政宗様にはそんなの通用しなかった。彼は私の悪人のような人相などには目もくれず、書物などを広げて部屋の中央で寛いでいた。だがまぁ、それだけならいい。
「これは、嫌がらせですか?」
彼の部屋担当になったのだが、普段から意外ときれいに片付いているし楽勝、と思っていたのが間違いだった。
…なんなの、この散らかりようはっ!
書き損じの紙が丸めて放り出されていたり、何冊も書物が出しっぱなしになっている。茶器も幾つか出されていたし、花器と、生けられずに放置されている花もある。
「今日は貴方の部屋を掃除するっていったじゃないですかっ!!」
とうとう怒鳴り声を上げた私に、政宗様は、ニヤリ、と笑い返した。
「だから、片付けの途中だ」
「じゃあなんで本なんて読んでるんですか!?」
「息抜きぐらい誰だってするだろう?」
どうも彼は、こうやって私を怒らせて楽しんでいるみたいだ。最近そう感じていたので、こっそり小十郎さんに相談してみたら、
『申し訳ありませんね。身体は随分と成長されたのですが、まだまだ中身は子供のようなところが抜けなくて…』
と、本当に申し訳なさそうにそう言われた。成実さんに言わせたら、
『ガキが気に入った女の子を苛めるのと同じだよ』
だそうだ。…まぁ、気に入ってくれているのは嬉しいけど、このくそ忙しい時にこれはないでしょ、全く!
「とにかく、片付けしますから出て行って下さい!」
「儂でなければ何処にしまえばいいか分からぬものもあるだろうが」
政宗様はそういうと、読んでいた書物をパタンと閉じ、徐にそれを投げて寄越した。
「…わっ、ちょ!」
「一度読んでみたい、と言っておったであろう」
「へっ?」
表紙を見れば、そういえば…と思い当たる。が、それも半年ぐらい前の話、それに、話題の端っこにちょっと名前が出ただけの代物だ。
「片付けようと思って書庫をひっくり返していたら出てきただけだ、どうせもう誰も読まんから、ゆっくり読め」
書庫の整理など、主がやらなくてもとうに終わっている。もしかして…わざわざ探してくれたの?
「あ…ありがとう、ございます」
嬉しくて素直にお礼を言ったら、彼も嬉しそうに笑ってくれた。
「構わん。書庫に眠らせるより、誰かに読んでもらったほうが書物も嬉しいであろう…さて名無しさん、片付けるぞ」
…そういや忘れてた。
「もう、なんでこんなに散らかしたんですか?」
「散らかしているのではない、掃除の為に出したんだ、バカめ」
「だったら花はなんでこんな状態なんですか、最後でいいでしょ」
「…片付けに飽きただけだ!」
「そんなことで威張らないで下さいっ」
その後、こっそり小十郎さんが教えてくれた。
『政宗様、その本を探す為に部屋の中も色々探していたようですよ』
新年のご挨拶は、この本の内容でも語ってみようかしら。ニコニコ笑う私を見て、きっと政宗様も、喜んで下さるわよ、ね?
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