戦国拍手ログ 2006年クリスマス・1 「かんせ〜い!」 パチパチと手を叩きながら、自分が作ったみたいにして声を上げると、孫市が苦笑気味に言った。 「もしもし?お嬢さん。これ、殆ど俺が作ったんですけど?」 言いながらも楽しそうだったから、言い返してやった。 「いいじゃない、嬉しいんだし。それにケーキ以外のはちゃんと頑張ったんだからね!」 「はいはい、ご苦労さん」 孫市は笑いながら私の頭をくしゃっ、と撫でると、ケーキを皿に移してテーブルへと運んだ。 出会った時は、この、くしゃって頭を撫でる彼のクセが嫌いだった。まるで子ども扱いされているようだったから。 付き合うようになってもこれはなくならなかった。でも、文句を言おうと思って顔を上げた時、出会った彼の瞳を見て止めた。 愛しまれている、という感じはきっと、ああいう気持ちをいうのだろう、そう思ったのだ。 そう思ってからは、この行為がとても好きになった。彼に言わせると『なんか撫でたくなる頭』なんだそうだが、それでもあんな瞳で撫でられたら、それだけで幸せになるのだ。 「乾杯しよ、乾杯!」 グラスにシャンパンを注ぎ、一つを孫市に渡した。チン、と一つ良い音をさせ、一口喉に流し込む。 「…あぁそうだ。手」 「て?」 唐突にそう言われ、不思議そうな顔をしたら、強引に手を引かれた。指に冷たい物が通される。 「メリークリスマス、名無しさん。これからも宜しく、な」 銀色の輪っかが填められた私の指に、そっと彼がキスをした。 [*前へ][次へ#] |