KYO拍手ログ
2006年1月
皆が出掛けた後、ゆやは一人縁側に出た。穏やかな日差しが暖かい。
「そうだ、今のうちに…」
胸元から、白い懐紙の包みを取り出した。中には綺麗な飴玉が一つ。ゆやは飴玉を日にかざしてみた。キラキラ光を反射して、ガラス玉のようだ。
「皆にあげたいんだけど、これ一個しかなのよね」
って言っても、こんなものあげても喜ぶ漢達には見えないんだけど…、そう呟くと、摘んだ飴玉を口に運ぼうとした。
直後、大きな暖かい腕に抱きすくめられ、飴を持った手を掴まれた。突然のことに驚きの声も上げられない。
「…何やってんだ?チンクシャ」
その時、背後の人物が声を発した。よく知る漢の声に、ゆやも緊張が解ける。
「…きょ、狂っ!?なんでいるの!?ってか、ちょっと、離してよ!」
「…飴か。ガキだな」
腕の中でもがくゆやを無視し、狂はその指の間の飴玉を見た。
「うっ…ウルサイわね!離しなさいよ!!」
狂の言葉にゆやは抗議の意味も込めて、彼の腕の中で暴れた。だが。
――次の瞬間、ゆやの指先は飴玉ごと、狂の口に吸い込まれていった。
「…甘い」
ゆやの白い指をひと舐めした後、狂はニヤリと笑って彼女を解放した。
「こんなもんばっかり食ってるから、成長しないんだな」
「な…っ!!関係ないでしょーーっ!!!」
真っ赤な顔で食って掛かるゆやを、楽しげに受ける狂。
いつもの二人の、いつもの時間が、穏やかな日差しの中で流れていた。
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