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KYO捧げ物
哀しみが癒えるまで6

家へ戻ると、幸村がまず出てきた。狂が戻るまでは、と気を使ってくれたのだ。

「お帰り、狂さん」

「…アイツは」

「奥で小助と話してるよ」

「そうか…世話になったな」

「なんの、狂さんとゆやさんのためならお安い御用だって」

でも随分心配してたみたいだよ、と告げると、幸村は小助を呼んだ。

「ボク達、しばらく外してるからさ、ゆやさんに早く顔見せてあげて」

そういうと、幸村は小助を連れて外へと出た。その後ろ姿を見送ると、狂はゆやのいる奥の部屋へを足を運んだ。

「…入るぞ」

そう障子越しに声を掛けてから部屋へ入る。

「お帰り、狂」

柔らかく微笑むゆやの瞳を見て、狂は眼を細めた。新緑色の瞳に、暖かい光が戻っている。彼女の傍へ座ると、彼はゆやを抱き寄せた。

「…悪かった」

そして少し腕に力を込める。

「でも、だからと言って自分で死のうとするな。俺を…置いて逝くな」

そう言えば、彼女の体がふるりと小さく震えた。それを狂は更に強く抱き締める。

「お前がいない世に、俺はいる意味がねぇ。お前が死ぬ時は俺も一緒だ」

どこか懇願するような狂の声に、ゆやの視界が揺れた。ごめんなさい、と囁くようにそういうと、ゆやも狂の背に腕を回した。

「狂、辛かったでしょう?あの子の目の前で…もっと私がしっかりしてれば、あんな事にはならなかったかもしれない。狂が傷付くこともなかったよね。ごめんね」

「お前が謝ることなんてねぇだろ。あれは俺の撒いた種だった…だから、俺がケジメを付けなきゃならなかったんだ」

きっとそうなのだろうとゆやは思う。だが、心優しい彼が、意に沿わないまま悲劇を生み出してしまった…そして、自分がその引き金を引いてしまったのかもしれないと思うと、胸が痛む。

あの少年も。これからちゃんと生きていけるのだろうか。そして…狂はその業を、背負っていかねばならないのだ。

「アイツ、お前に謝ってたぞ」

「あの子が?」

「あぁ。それから、灯に預けてきたから心配ない」

「そう…いつか、逢いに行きたいね」

「…そうだな」

その時には、せめて悲しい色がなくなっていればいい…二人はそう思いながら、暫く抱き合ったままでいた。

憎しみが許しに変わるには、長い時間が掛かるだろう。だが、少年には未来を見て欲しい、そう願いながら、二人はただ静かに温もりを分け合っていた。



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あきゅろす。
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