CH拍手ログ
2010年七夕
冷たいコンクリートと、味気のない手すりに囲まれた屋上に、女はいた。
サワサワと葉音がしてそちらを見れば、非常口の横に一本の笹が立てかけられている。七夕飾りに混じって、一枚だけ飾られた短冊は、彼女の文字が綴られているのか…撩は背中を向けている彼女に、ゆっくりと歩み寄った。
その気配に僅かに視線を彼へと向け、小さく微笑む女に、撩は挨拶をするように腕を上げ返す。彼に怪我の一つもないと知ると、彼女は安堵の色を滲ませつつ、また夜の街へと視線を戻した。
「ここからだと、街のネオンでも、なんだか星空みたいに見えるわね〜」
まるで空が落っこちてきたみたいだと思わない?、そう言いう彼女の顔は、途中で歩みを止めてしまった撩には分らない。背を向ける女の向こう側に見えるのは、空から落ちてきた星の川なのだろうか。
手すりにもたれかかる女の両側に手をつき、女をその檻に閉じ込める。不思議そうな顔で見上げる相手の耳元へ唇をよせれば、穏やかに微笑を零して振り返り、撩をその白い腕で抱き寄せた。
――ただいま、香。
――おかえり、撩。
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