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CH拍手ログ
2010年7月
美樹は目の前に座る香を見て、首を傾げた。

「ねぇ、香さん。もしかして、夏バテでもしてる?」

そう訊ねられ、香は『え?』と聞き返した。それもそうだろう。今、彼女は美樹の目の前で、CAT’S新作のケーキを頬張っていたのだ。夏バテなどしているのであれば、例えレモン風味のさっぱりした物であっても、こう元気よくは頬張れないだろう。

「もう、香さんたら」

口元を指差せば、香は、あはは、と笑いながらクリームを舌でちろりと舐めとった。その子供っぽい仕草に、美樹は目を細める。

「夏バテなんてしてらんないわよ。あのもっこりバカがいるんだもん」

でもなんで?、と香が聞くので、美樹は、うーん、と再び首を傾げた。

「なんていうか…痩せた気がするのよね、香さん。でも良く見たら、胸は落ちてないわね。むしろ育ってる?」

美樹の言葉に、香はゴホゴホ、と突然咽た。大丈夫?、と水を差し出せば、煽るようにそれを飲み干す。

「や、やぁねぇ、美樹さんったら。あれじゃない?最近筋トレしてるから」

香の慌てたようなその言葉に、ふぅん、と美樹が頷いた。そんな彼女を見て、香はごまかすように笑い、クーラーの効いている店内にも関わらず、服の胸元を摘みパタパタと動かした。

「…あっ」

思わず声を上げた美樹に、香の手が止まり、怪訝な顔をする。慌てて、なんでもない、と言いながらお替りのコーヒーを差し出す美樹に、香は礼を言うと再びケーキを頬張った。

そんな姿に、美樹は先ほど目にしたものを思い浮かべる。それは胸元に咲いた一輪の紅い華。

――なるほど、それが原因ね…冴羽さんたら、香さんの事、本当に好きなのね。

ニコニコ笑いながらケーキを口にする香を見て、美樹は笑みを深くするのであった。

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