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CH拍手ログ
2010年4月
「今年はお花見、とうとう行けなかったわねぇ」

ため息混じりにそう零した香に、撩は新聞から目を上げて言った。

「しょうがねぇだろ、ずーっと依頼こなしてたんだし」

しかも撩が殆ど受ける事のない男の依頼だったのだ。あまりの生活困窮具合に撩が折れたのだが(香に脅されたとも言うが)、そのせいでちょうど桜の見頃はずっと依頼者に張り付く破目に陥っていた。

「それはそうなんだけどさ…しかもこの雨だし…」

香が見上げる空は、夜であったが星も見えない、雨を滴らせる真っ暗な空だった。しとしとと降り続ける雨は、決して強い物ではなかったが、僅かに残っている桜を散らせるには十分だろう。

「ったく…」

夕飯も終わり、暫し寛いでいる時間帯。普段は飲みに出かける時間だが、依頼も終わって、やっともてる二人の時間。

「…見に行くか」

「…え?」

「もうあんまり残ってないかもしんないけど〜。せっかく香ちゃんと二人だし。雨に濡れた終わりかけの桜も、たまにはいいんでない?」

素直に誘うには未だに残る恥ずかしさを、おどけた風に隠せば、香の顔に、満開の笑顔。

「…うん!じゃあ用意してくるからちょっと待ってて!」

リビングを慌てて出て行った後姿に、撩は苦笑交じりの眼差しを向ける。

その日二人で見た桜は、小さな公園の街灯に照らされ、しっとりと濡れた白く輝く、美しい桜だった。

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あきゅろす。
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